“everyone has a plan until they get punched in the mouth.”
「誰もが計画を持っている、口にパンチを受けるまでは。」
マイク・タイソン
こんにちは、西田です!
9月に入っても相変わらず暑いフロリダですが、先週は私が去年まで住んでいたカリフォルニアも熱波の影響で非常に暑くなっているとのことでした。
ここ数年、あまりにも暑くなったり、風が強くなったりすると計画停電を行うようになったカリフォルニアですが、今回も住民に冷房を使わないように要請した挙げ句、一部の地域では計画停電が行われました。Exploratoryでも、一部のカリフォルニアに住むメンバーの家は停電になり作業が止まりました。
近年行われてきた石炭火力発電所と原子力発電所の閉鎖、そうして失われた電力を補うと謳われた太陽、風力発電が実はまったく補えていないという現実が大きく影響していると言われています。
去年フロリダに引っ越してきて驚いたのは、基本的にどの家でも一年中、24時間冷房が使われています。それでも、電気が止まることはありません。カリフォルニアの当たり前がアメリカの当たり前とは限らないと気づいた瞬間でもありました。
現時点ですでに十分な電力を供給できないカリフォルニアですが最近、2035年以降はガソリン車の新車の販売ができなくなる、と発表していました。「脱炭素」ということで、州民に電気自動車への移行を促していくということですが、それは現在よりもより多くの電力が必要になるということを意味します。
電気自動車の都合の悪い事実は、実は肝心の電気のほとんどは天然ガス、石油、石炭で生成されており、太陽光や風力と言った「再生可能エネルギー」で生成されるのはカリフォルニアのような州でさえ最大でまだ20%ほどです。
今のところは、カリフォルニア政府は再生可能エネルギー(太陽、風力)で補うと言っていますが、物理的に考えて無理なため、最後には原子力発電に舵を切り替えていくことになるのではないでしょうか。
そうでもなければ、先週の電力危機のさいに見られたような、ガソリン電動機でテスラをチャージするという冗談のような将来がやってくることになるでしょう。
それでは、今回も以下に興味深いデータ関連の記事を紹介をします。
最近の興味深い英文の記事
ニューヨーク・タイムズは機械学習を使ってどのようにサブスクリプションを増やしているか
How The New York Times Uses Machine Learning To Make Its Paywall Smarter - リンク
現在デジタルのサブスクリプション(購読)数が1000万人を突破し、2027年までに1500万人を目標にしているというニューヨーク・タイムズが、自社のサイト訪問者を有料サブスクリプション顧客にする仕組みについて紹介しているブログポストを出していました。
訪問者が何らかの理由でウェブサイトに来ても、無料で読める記事がなければその人がコンバートする可能性はほぼゼロでしょう。かといって、月にある程度の数の記事を無料で読むことができれば、それはそれでコンバートすることもないでしょう。
そのため、無料で読める記事の数をサイトに定期的に来たいと思わせるだけ十分にしたいが、同時にコンバートしたいと思わせるだけの数に限定したいという、2つの思惑のトレードオフがこうしたニュースサイトの悩みとなります。一般的には無料で読める記事の数を誰でも一定で設定しているのをよく見かけますね。例えば一ヶ月5記事までは無料といったようにです。
ここを最適化させるために、ニューヨーク・タイムズではユーザーの過去の訪問データなどからユーザーごとに月に無料で読める記事の数を設定する「ダイナミック・メーター」という仕組みがあるとのことです。
まずは、サイトに来た人は無料ユーザーとして登録すると記事が読めるようになりますが、こうしてそれぞれのユーザーのエンゲージメントを計測できるようになります。つまり、そのユーザーがどういった記事をいつどのタイミングでどれだけ読むのかがわかるようになる、ということです。
こうして、過去にコンバートしたユーザーたちのエンゲージメント・データが作れるので、そのデータを元にユーザーごとの最適なリミット数を予測するための予測モデルを作るとのこと。
さらに、2つのグループにユーザーを分け、それぞれ違う無料記事のリミット数を設定しA/Bテストを行っているとのことです。ここでのゴールとなる指標は2つで1つはエンゲージメント、そしてもう1つはコンバージョン率。
こうして、それぞれのユーザーに対してそれまでのエンゲージメントなどの情報を元に動的に無料記事のリミット数が決まっているとのことです。
どうりで、いくつかの記事を無料で読めるときがあったと思えば、まったく読めないということがあっりするわけです。
データ・チームに参加する前に注意すべきこと
Red Flags to Look Out for When Joining a Data Team - Link
データ関連の仕事のオファーをもらい、いざ新しい会社で仕事し始めたところ、期待していたものと現実の間に大きなギャップがあり失望してしまうということはよくあります。そこで、どういったことがよく問題になるか、それらを事前に明らかにするために就活インタビューの際にどういったことを質問すべきかをまとめた記事があったので、要訳として紹介します。
貴重なデータ・ヒーローが早く辞めてしまうのはなぜか
Unsung Data Hero - リンク
今はどの会社でもデータ関連の人材は貴重で、またそうした人材を探すのも大変です。しかし、そうした人材をしっかりと活かすことができていない会社も数多くあります。
というのも、こうしたデータを使える人材は組織に数少ないため、どうしてもそういった人たちに「データ」と言うだけで様々な仕事が毎日山のように押し付けられがちです。
結果として、データを使える人材は2年ほど経ったあたりで他の会社に移っていきがちです。(これは労働市場が緩やかで動きやすいアメリカで特に顕著です。)しかし、これはなんとももったいないことです。というのも、どんな仕事でも生産性が高まっていくのは仕事についてから1、2年ほど経ってからだからです。
こうしたことを防ぐためにも、さらに貴重な人材であるデータ関連の仕事をする人達をしっかりと育成するためにも、管理職を含め組織の誰もがデータを使えるようになる体制を作ることが急務であると思います。
フランス政府はAIを使って個人プールを検知し税金アップ
French government uses AI to spot undeclared swimming pools — and tax them - リンク
フランスでは、自宅にプールがあると税金(所有資産税)が上がるということで、多くの人たちはプールを作っても公式には申請しないままにしているらしいです。そこで、フランス政府はGoogleなどとパートナーを組んで、航空写真と画像認識のAIを使って、2万件以上の登録されていない自宅プールを検知し、違反切符を発行し税収増を行っているとのことです。
一見、よくありがちな画像認識のAIの事例のようですが、こういうのが一番勘弁して欲しいなと思うAIの事例でもあります。というのも、こうした使い方はプライバシーの問題と深く関連し、特に政府が主導的に行うとなると、一気に国民監視の方に流れていくからです。
AIはデータ量が大きければ大きいほど成果を発揮しますが、国民に関して最も大きな量のデータを集めることができるのはGoogleのような企業ではなく、政府です。そういう意味で、国民を完全支配したい全体主義とAIの相性は非常によく、すでに中国では当たり前のようにAIが国民監視のために使われています。
そして、こうした流れは中国のような全体主義国家にとどまらず、欧米、そして日本といった自由主義を謳う国家でもコロナ対策として姿を見せ始めています。こうした技術を使って国民を監視していくような例はこれからもたくさんでてくるのではないかというのが心配です。
今週のチャート
アメリカ国債の国別保有高(上位30カ国)を可視化したのが以下のチャートです。
コロナ、そしてウクライナ戦争を経て、世界は2極化(欧米 vs. ロシア/中国)してきているようです。現在は日本円やユーロが下がり、ドルが上がっている状況ですが、いつまでこの状況は続くのでしょうか。アメリカ覇権の基盤である基軸通貨ドルの簡単な説明から今後の見通しを含めた考察をこちらにまとめてみましたので、興味のある方はぜひご参照ください。
データサイエンス・ブートキャンプ・トレーニング #29
次回の「データサイエンス・ブートキャンプ」は来年1月の3日間集中コースとなっております。
データサイエンス、統計の手法、データ分析を1から体系的に学ぶことで、ビジネスの現場で使える実践的なスキルを身につけたいという方は、ぜひこの機会に参加をご検討ください!
ビジネスのデータ分析だけでなく、日常生活やキャリア構築にも役立つデータリテラシー、そして「よりよい意思決定」をしていくために必要になるデータをもとにした科学的思考もいっしょに身につけていただけるトレーニングとなっています。
日時:
9月 平日3日間全日コース: 2023/1/18(水), 19(木), 20(金)
SaaS/サブスクリプションアナリティクストレーニング 12月開催
SaaSやサブスクリプションビジネスの改善に必須である、ビジネス指標(KPI)の定義、コンバージョンやチャーン(解約)の要因分析、さらにそれらの先行指標となるエンゲージメントの計算方法や分析手法といったものを一気にハンズオンを通して学ぶことで、即現場で使えるスキルを身につけていただくためのトレーニングです。
日時: 12月 平日2日間コース: 2022/12/8 (木)、9 (金)
Exploratoryでは現在エンジニアの方を募集中です!
UIを使ってデータサイエンスを簡単に行うことができるExploratoryデスクトップ、そしてデータサイエンスやデータ分析をチームで行っていくためのプラットフォームであるExploratoryサーバーの開発をいっしょに行っていただけるエンジニアの方を、現在募集中です!
興味のある方はぜひ以下のページより詳細をご確認ください!
今週は以上です!
それでは、引き続きよろしくお願いいたします!
西田, Exploratory/CEO
KanAugust
NisidaさんのQiita記事はいくつか拝読させていただいていたのですが、こんな素晴らしいのもあったのですね! いろいろ語り尽くせない知見をいただきました。ありがとうございます!
とても興味深い記事をありがとうございます。NYTが日頃全体主義的に感じている印象と重なって深いなと思いました。ところで苫米地博士が何かの動画で「今のAIは単にディープラーニングでしかない。心を表現できないのは本当のAIじゃない」みたいなお話をされてました。確かハードAIと呼んでらっしゃいましたが、hardで検索すると物理的な方向しか出てこないのでよく分からないです(シンAI?笑)。それが私の頭の中で離職の件とくっついて、やがてデータサイエンティストがAIに食われるようになったら、AIも本物に近づいているかもしれないなと思いました。離職には以外と感情の縺れや人間らしさゆえの人間関係が多少関係してるように思えるので。ただそれでも、そのときのAIはやはり個性的であってほしいものです。と私の本能が言っておりました笑。失礼いたしました。