Exploratory Newsletter Vol. 74
Good intentions don’t work. Mechanisms do.
良い心がけ(試み)だけではだめだ。仕組みがあるかどうかだ。
Jeff Bezos
こんにちは、Exploratoryの西田です!
今年も残すところわずか10日ほどとなりました。
去年の年末、来年の春には騒動も収まり、1年ぶりに日本に帰れるかなと思っていたのですが、なんと1年が終わってみると規制や自粛の度合い、さらには「超過死亡」と言った点では去年よりもひどくなった1年でした。
今年は「明るい未来」を約束されたワクチンが出てきて、希望すれば誰でも(子供以外)接種可能になった年だっただけに、とても不思議です。
何かがおかしいというとき(または、うまくいってるとき)は、裏に何らかの仕組みがあるものです。良い仕組みは良い結果を導き、悪い仕組みは悪い結果を導きます。
そうした仕組みを解明するには、「演繹」的に理論からスタートするのではなく、まずは現実に起きていることを注意深く観察し、事実を積み上げ、そこから仕組みを解き明かしていくという「帰納」的な思考法が役立ちます。そこでは現実世界のリアルタイムのデータは欠かせません。
帰納的にデータを使えるかどうかによって見えてくる世界が180度違ってくる、というのはこの2年での大きな気づきでした。そして、データを演繹的に使うのが得意でも、帰納的に使うことができない多くの学者や専門家の人たちは適当な予測や主張をし、それが後になって間違っていることがわかっても、予測が外れたときの経済学者のように知らん顔、といった態度なのには大きく失望しました。
これでは、「正しい」統計学をどんな学校でも教育しているはずなのに、現実世界で現場のデータを使ってビジネスを日々改善していけるような人はまだまだ少ないわけです。現実の世界の「仕組み」を解明していくためのデータサイエンスの教育の構築が急がれます。
それでは、今週は3本の記事を紹介したいと思います。
最近の興味深い英文の記事
テック業界の最新トレンド - 2021年版
Three Steps to the Future - リンク
テック業界で私が注目しているBenedict Evansというアナリストがいますが、彼が毎年発表するテック業界のトレンドが出ていました。その中から興味深いチャートをいくつか紹介したいと思います。
中国のデータ・ガバナンスの向かう先
Data as a factor of production - リンク
これまでは生産性を決定する4つの要素として、土地、労働力、資本、技術(テクノロジー)があると言われていましたが、中国政府は去年の4月に出した「意見書」の中で、データを第5の要素として追加しています。
中国政府によると、現在中国のGDPの40%近くはデジタル経済によるものだということなので(リンク)、データが第5の要素というのはもっともという気がします。
中国は政府が市場の監督者、守護神という役割で、必要であれば直接手を出すという立場なので、土地、労働力、資本、技術、そして今度はデータの市場での供給、流通、割り当ての仕組みを積極的に構築していくということなのでしょう。
短期的にはデータの主権を確立し、中長期的には自国のデータ市場を作っていくとのことです。
日本は現在データに関する主権は恐ろしいほどにシリコンバレーや中国、韓国からやってくるテック企業にどんどんと侵食されています。日本もしっかりとデータ主権を確立することが早急に求められます。
30%の顧客は一度辞めても戻ってくる
2021 Subscription Churn & Cancellation Benchmarks - ProfitWell - リンク
SaaS / サブスクリプション型ビジネスに特化した分析サービスを提供するProfitWellが、3万社のSaaS企業からのアンケートをもとにしたチャーン(解約)に関するレポートを出していました。その中で特に注目したいのが以下の2つです。
まずは、ビジネスの規模に関係なく一度キャンセル(チャーン、解約)した顧客のうちの約3割ほどは、また戻ってくるとのことです。
左側は、1人あたりの平均年間収益が$100未満、右は$100以上。さらにその中で、左が意識的にキャンセルした人たち、右は支払いが失敗した人たち。
キャンセルした顧客にもしっかりと価値のある情報を提供し続けることで、より多くの顧客がさらに早いタイミングで戻ってきていただければいいですね。
2つ目は、業界のチャーン(キャンセル)率のベンチマークです。顧客1人あたりの月間収益が低い(左側)とチャーン率は5%、6%ほどですが、逆に高くなるにつれてチャーン率は減少していきます。
もっとも、1人あたりの収益が高いサービスは企業や部門単位での導入のケースが多かったりするので、ある意味当たり前かもしれません。それでも、自社のチャーン率を評価する際の1つのベンチマークとなるのではないでしょうか。
ところで、上の2つのチャートはどちらも一見信頼区間を表すエラーバーに見えますが、実は箱ひげ図の箱の部分、つまり下から25%目から75%目の間の分布を表しています。
データサイエンス・ブートキャンプ・トレーニング #25
「データサイエンス・ブートキャンプ第24回」は来週の開催となり、受付はすでに終わっておりますが、次回来年2月に開催の「データサイエンス・ブートキャンプ第25回」の方はすでに受付を開始しております。
データリテラシーを高めたい、またはデータサイエンス、統計の手法、データ分析を1から体系的に学び、ビジネスの現場で使える実践的なスキルをつけたいという方は、ぜひこの機会に参加をご検討ください!
日時: 2022/2/15(火), 16(水), 17(木)
講師:西田勘一郎
データラングリング・トレーニング #5
データ分析の8割の時間はデータラングリング(データの加工)に費やされているとよく言われます。データをいかに自由自在に扱うことができるかが、データ分析の質を決めると行っても過言ではないでしょう。
そこで、現場で使えるデータラングリングのスキルを1から体系的に、そして効率的に身に着けていただくためのトレーニングを提供しています。
次回の開催は1月となります!
日時: 2022/1/19(水), 20(木)
講師:西田勘一郎、白戸敬登
今週は以上です!
西田, Exploratory/CEO
KanAugust