こんにちは!
Exploratoryの西田です。
先週アメリカ南東部にやってきたハリケーン・ヘリーンによるダメージは、私の住むフロリダでも大きく、友達の中にも洪水で一時住む場所がなくなってしまった人達が何人かいたほどでした。
しかし、さらに壊滅的だったのはノース・カロライナ州やテネシー州のアパラチア山脈近郊の地域に襲った洪水でした。すでに200名以上の方の死亡が確認されているとのことですが、アクセスが難しい奥地へ被害が拡大したため、死亡者はもっと多いとも言われています。現在も行方不明者の捜索、道路が破壊され身動きが取れなくなってしまった人達の救出活動が行われています。(リンク)
アメリカにはこうした自然災害などが起きたときの緊急活動にあたるためのFEMA(Federal Emergency Management Agency / 米国連邦緊急事態管理庁)という連邦機関があるのですが、今年のハリケーンシーズンを乗り切る予算が足りないとの発表を行っていました。(リンク)
その理由が、すでに予算の大半である1ビリオンドル(約1500億円)を違法移民のシェルター(滞在所、避難所、ホテル、など)や移送にかかる費用として使ってしまったからとのこと。
2021年、バイデン政権になってからアメリカに入ってくる違法移民は急激に増加しました。
そしてこの違法移民の増加は偶発的に発生したものではなく、アメリカ政府、NGOが裏で手を引いていたことがわかっています。
本来であればFEMA(米国連邦緊急事態管理庁)の予算は今回のようなハリケーンなど、自然災害による被害者の救済、被災地の復興に使われるはずなのですが、異常に増加した違法移民のために使われていたということで、特に右派の間で問題となっています。
また、最近ちょうど同じ時期にアメリカはウクライナ向けの8ビリオンドル(約1.2兆円)の軍事支援金を送る緊急法案を通したばかりです。(リンク)
こうしたことから、右派、そしてハリケーン被害を受けた地域に住む市民の間で、民主党現政権は「America Last」だとの声が大きくなっています。(トランプ陣営の標語がAmerica Firstであるのに対して)
アメリカのメディアの多くは最近は特に極端に民主党寄りであるため、民主党にとって都合の悪い南部州でのハリケーン被害、そして復興活動の遅延などのニュースはなるべく避けているようです。
そのため、リベラル系メディアの情報しか入ってこない日本にはアメリカの南部州での救済活動、復興の遅れによる現地の実情に関する話はなかなか入ってこないのではないかと思います。
現在アメリカは一ヶ月後に大統領選挙(そして、上院、下院なども)を控えているため、このハリケーン被害に関するニュースもどうしても政治化してしまいがちです。これは右派も左派も同じです。しかし被害を受けた人達にとっては、共和党か民主党かは関係ありません。こういうときこそ政治的な違いを乗り越え、迅速な救済と復興が行われることを願いたいと思います。
データ、AI、意思決定関連記事
新しいアーキテクチャを元に作られたAIモデルがLiquid AIからリリースされる
MITからスピンオフしたスタートアップであるLiquid AIがLiquid Foundation Models (LFMs)をリリースしました。これは現在ChatGPTなどに使われているトランスフォーマーを基盤としたアーキテクチャと異なる「Liquid Neural Networks」を基盤とした新しいアーキテクチャが採用されています。
データに対して動的に適応することができ、さらに継続的な学習が可能とのことで(トランスフォーマーのアーキテクチャは一度学習した後の調整には再度追加のトレーニングが必要となります)、そのため急速に変化する環境やデータセットにおいても関連性を維持でき、メモリー効率が高く、モデルのサイズも比較的小さくてすむと言われています。
にも関わらず、既存のモデルに比べても高い性能を出しています。
ChatGPTなどで使われている現在のAI(トランスフォーマーを元にしたアーキテクチャ)のシステムは、理論的にはデータの量を増やし、パラメーターの量を増やし、演算処理をするGPUなどを増やせば増やすほど性能が上がります。
そして、その限界は現在のところまだ見えていません。そこで、OpenAIにしても、Googleにしても、Metaにしても、現在どんどんとGPUのクラスターの数を増やし、データとパラメーターの数を増やし、自分たちのAIの性能を向上させることに資源を投入しています。
こうした大規模なAIモデルの学習環境を支えるデータセンターには、大量の電力が必要となり、それが現在テック企業が自分たちのデータセンター専属の原子力発電所の確保に必死になっている理由です。(リンク)
オラクルのラリー・エリソン氏(リンク)、Meta(Facebook)のマーク・ザッカーバーグ氏(リンク)によると、この競争に参加するには少なくとも100ビリオンドル(約15兆円)が最低でも必要だということです。
それだけに、この新しいタイプのAIアーキテクチャに対する期待は大きいものがあります。これからに注目したいと思います。
現在Liquid AIのAIモデルはPerplexity AI、Cerebras Inferenceなどを通して試すことができます。
AI規制法案にカリフォルニア知事が拒否権を行使
カリフォルニアですでに議会で承認されたAIセーフティ法案(SB1047)が、知事によって拒否権を行使され廃案になったとのことです。(リンク)
この法案が通ると、AIモデルを作るものは誰もがカリフォルニア政府の「セーフティ」に関する承認を受ける必要があり、さらにそのモデルを使ったサービスによって何らかの損失が生じた場合は、そのモデルの提供元(それはOpenAIかもしれませんし、もしくはオープンソースであれば名の知れない個人かも知れません)が金銭的な面も含めた責任を取るというものでした。
この手の規制が好きなカリフォルニアですが、民主党に多額の資金を提供しているシリコンバレーのOpenAI、Google、ベンチャーキャピタルなどがこの法案に反対するよう知事にプレッシャーをかけていたとのことです。OpenAIやGoogleなどは連邦政府レベルでは、AIモデルに対して規制をかけることに賛成していたので、これには私も驚きました。
AIモデルに対する何らかの規制が必要だとする意見も理解はできるのですが、ただ多くの場合はそうした規制は当初の目的を離れ、既存企業を守るためのものとなってしまうことが多く、それはソフトウェアの世界ではオープンソースによる開発を不可能にしてしまいかねません。
AIに関する規制と民主化の動きについては過去にセミナーで解説してますので、興味のある方はぜひご覧ください。
今週のデータ
TWD#30 - 電気自動車をめぐるアメリカと中国の貿易戦争
アメリカが電気自動車を強く推す理由は日本とドイツの自動車産業潰しのためです。
電気自動車は日本が強いハードウェアではなく、アメリカ(シリコンバレー)が強いソフトウェアで勝負が決まります。電気自動車とはiPhoneに車輪がついたようなものと思っていただければ、その全体像がつかみやすいと思います。
そして現在一人勝ちしているのがソフトウェア(そしてAI)の強いアメリカのテスラです。
しかし、そのアメリカに果敢にチャレンジしているのがBYDなどを抱える中国です。 そのため、アメリカはあの手この手で中国の電気自動車がアメリカの市場に入ってこないよう対策を打っているのですが、その最新のものが中国の自動車用ソフトの禁止です。
TDW#31 - 庶民が感じるインフレと中央銀行が見てるインフレのギャップ
最近アメリカの中央銀行は0.5%の利下げに踏み切りました。その理由はインフレが「収まった」ということでした。
しかし、アメリカに住む一般市民にとっては物価高は収まったようには思えないほど、物価は高いままです。 この一般市民が感じるインフレと、中央銀行の政策担当者が見てるインフレの違いについてチャートを使って解説しました。
データサイエンス・ブートキャンプ・トレーニング #37
おかげさまでいつもご好評いただいおりますデータサイエンス・ブートキャンプですが、現在12月版への参加申し込みを開始しております。
ビジネスのデータ分析だけでなく、日常生活やキャリア構築にも役立つデータリテラシー、そして「よりよい意思決定」をしていくために必要になるデータをもとにした「科学的思考」もいっしょに習得していただけるトレーニングとなっています。
データサイエンス、統計の手法、データ分析を1から体系的に学ぶことで、ビジネスの現場で使える実践的なスキルを身につけたいという方は、ぜひこの機会に参加をご検討ください!
日時:2024年12月17日(火), 18日(水), 19日(木)
場所:東京八重洲(対面形式)
今回のニュースレターは以上となります。
それでは、素晴らしい残りの週末をお送りください!
西田, Exploratory/CEO
KanAugust