こんにちは!
Exploratoryの西田です。
今週はフロリダにまたハリケーンがやってきました。今回のはカテゴリー4(5が最大)となり、各地に多大な被害を与えるほどでしたが、幸い私の住む地域は直撃を逃れたため被害は限定的でした。うちも庭の木が倒れたり、裏の川が溢れたりはしましたが、その程度で済んだのは幸いでした。
フロリダに2021年に引っ越してきて以来、毎年ハリケーンに遭遇しているため慣れてきましたが、それでも自然の持つ大きな力にはゴジラのような怪物を見る気がします。
日本でも最近北陸地方で洪水の被害があったと聞きましたが、素早い復旧が行われることをお祈りします。
ところで先週、「戦略論と科学思考の教科書 - チームで創るデータ駆動イノベーション」の著者であり、過去にはデータサイエンス・ブートキャンプに参加いただいたこともある吉田 裕介氏をお招きして、この本を書くに至った背景や戦略論と科学的思考などについて対談させていただきました。こちらにセミナーの録画がありますので、ぜひご参照ください。
データ、AI、意思決定関連記事
AIと原子力発電
先週、アメリカのエネルギー企業であるコンステレーション・エナジーが、使われなくなっていたスリーマイル島原子力発電所を再稼働させ、そこから得られる電力の全てをマイクロソフトに供給するという発表を行いました。(リンク)
さらに、マイクロソフトはプライベート・エクイティの金融企業であるブラックロックと提携し、データセンターに必要となる電力を確保するためにまず30ビリオンドル(約4兆円)、最終的には(14兆円)にも上る投資をすると発表しました。(リンク)
先週、AIの利益は現在のLLM(ChatGPTなどに使われている大量言語モデル)のようなAIモデルのトレーニングと運用に欠かせないGPU市場を独占するNvidia一社が総取りしているという話をしましたが、その大規模なGPUクラスターを動かすのに必要となるのが大量の電力です。
AIモデルを運用するために急激に増えた電力は、従来の電力会社からの電力だけでは足りず、どのAIテック企業もGPUの確保だけでなく、電力の確保にも必死となっています。これが前述の発表の背景です。
オラクルの創業者、元CTOであるラリー・エリソン氏も現在のようなAIを動かすデータセンターには原子力発電が必要となると話していました。そうした背景もあって、彼によるとこのAIレースに参加するためには少なくとも100ビリオンドル(約14兆円)が必要となるとのことです。(リンク)
前述のマイクロソフトの発表でも彼らは100ビリオンドルの投資を計画しているとあったことからも、この数字は適当なものではないようです。
ところで、前述のコンステレーション・エナジーのCEOは「原子力発電なしにAIの進化は続かない」と言っていましたが(リンク)、彼らのような原子力業界にとっても、この急増する電力需要というのはこれまでのEV(電気自動)やクリーンテックなどの需要とは桁違いに大きいとのことです。
こうした急増するGPU、電力需要に応えるために必要となる膨大な投資額、国の規制などを考えると、AIのレースに本気で参加できるのは、アメリカと中国の企業だけとなりそうです。
EV(電気自動車)におけるアメリカと中国の攻防
アメリカが中国とロシアの車用ソフトウェアの使用を禁止するとのことです。中国やロシアなどが運転データを収集したり、または車のシステムに侵入したりすることをアメリカ政府が懸念しているからとのこと。(リンク)
たしかにそういう可能性もあると思いますが、それを言ってしまえば、例えば日本などもアメリカの車用ソフトウェアの使用を禁止すべきとなるでしょうが、もちろんなりません。テスラなどアメリカ製の電気自動車は絶えずデータを収集していますし、それがアメリカ政府に渡されていないという保証はありません。また、最近のレバノンでおきたポケベルやトランシーバーのように、いずれは車も爆破や何らかの異常を遠隔操作できる日が来るのはそう遠くないでしょう。
私は個人的にEV(電気自動車)はアメリカによる日本とドイツの自動車産業潰しだと思っています。というのも、車の動力が内燃機関から電気になると、それはiPhoneに車輪がついたようなものとなり、そこでの勝負はソフトウェアが決めます。そして日本もドイツもソフトウェアは苦手で、これはアメリカにとって圧倒的に優位な土俵です。これがアメリカがEVを強力に推進する理由であり、その波に乗っているのがテスラです。
ところが、ここでアメリカの優位を脅かす存在が出てきました。それが中国です。中国も国を挙げて電気自動車に力を入れていますが、その売上台数はすでにテスラを超えるほどです。
そしてBYDなど中国の自動車企業は自社のEVを世界に向けて輸出を拡大中です。(リンク)
そして、主な輸出先はドイツ、オーストラリア、イスラエル、ブラジル、タイなどとのことです。(リンク)
ヨーロッパへの電気自動車の輸出台数はすでに中国がトップで現在拡大中です。
スマホで起きたことが繰り返されようとしているのではないかと思います。というのも、アメリカや日本ではアップルのiPhoneが主流ですが、ヨーロッパやアジアなどに行くとアンドロイドベースのスマホがiPhoneよりも多かったりします。(リンク)
これと同じように、ヨーロッパやアジアなどはそのうち中国の電気自動車であふれることになるでしょう。しかし、アメリカは様々な手を使って国内市場においてテスラを守るのではないでしょうか。
こうした背景から、アメリカ政府はすでに去年より中国製の電気自動車に対して100%の関税をかけていました。しかし、これにはアメリカ国内またはアメリカと通商同盟(NAFTA)のメキシコで作れば関税なしで「輸出」できるため効果が限定的でした。そこで、次の手として出てきたのが中国製のソフトウェアの使用禁止です。これで中国製の電気自動車がアメリカ市場に入ってくる道はほぼ閉ざされることになるでしょう。
貿易の自由化を謳い、日本など他国には関税ゼロ、規制撤廃を求めるアメリカですが、自国の戦略的重要産業を守るためには相手国の製品に関税をかけまくり、都合の良い規制を作るのもアメリカです。
リモートからフルタイムオフィスへ戻るアメリカ企業
現在アメリカではリモートを止め、フルタイムでオフィスで働くよう働きかけている企業が増えています。
KPMG 2024 CEO Outlook Surveyによると80%近くのCEOが完全リモートワークは次の3年でなくなるだろうと回答しているとのことです。
アマゾンは最近CEOが社員に対して1月2日までに全ての社員は毎日オフィスで働くよう通知するメールを送ったことで話題になりました。CEOのアンディ・ジャシー氏はその理由として生産性を挙げています。これは現場で仕事している人であれば誰でも気づいていることですが、やはり複数人で仕事をしている限り同じ部屋で仕事をしたほうがコミュニケーション、問題解決やアイデア出しのための議論において圧倒的に効率がいいのは明らかです。
アメリカはいい意味でも悪い意味でも、どんどんとやり方を変えていきます。一つのことを特に理由もなくだらだらとやり続けることがありません。激しい競争世界なので切り替えるべきときにさっさと切り替えれない企業は競争に負け、最後には潰れるという現実があるからでしょう。
日本ではまだまだリモートが当たり前となっている企業が多いようです。しかし、好む好まずに関係なく、多くの企業はアメリカや中国の企業と競争関係にありますから、いずれこうした生産性の差が日本企業にとって大きな足かせとなっていくのではないかと心配します。
今週のデータ
TWD #28 - アメリカから入ってくるニュースがいつも民主党寄りな理由
テレビ、新聞を含むアメリカのほとんどのメディアは民主党寄りです。その理由の1つはそこで働くジャーナリストの大半が民主党寄りの人たちで、逆に共和党寄りの人はほとんどいないからです。 この前提を知らずにアメリカから入ってくるニュースを読んでいると、気付いたら親民主党、反共和党となっていきます。
TWD #29 - 民主党から共和党支持へと流れていくアメリカ人
現在アメリカは戦争や外交だけでなく、経済、違法移民、都市部での犯罪、貧困化など内政にも多くの問題を抱えています。
そうした問題に対して効果的な対策をまったく打てない現民主党政権への失望から、多くのアメリカ人は共和党、そしてトランプ支持へと流れていっています。
このトレンドを世論調査で有名なギャロップのデータを元に解説してみました。
データサイエンス・ブートキャンプ・トレーニング #37
おかげさまでいつもご好評いただいおりますデータサイエンス・ブートキャンプですが、現在12月版への参加申し込みを開始しております。
ビジネスのデータ分析だけでなく、日常生活やキャリア構築にも役立つデータリテラシー、そして「よりよい意思決定」をしていくために必要になるデータをもとにした「科学的思考」もいっしょに身につけていただけるトレーニングとなっています。
データサイエンス、統計の手法、データ分析を1から体系的に学ぶことで、ビジネスの現場で使える実践的なスキルを身につけたいという方は、ぜひこの機会に参加をご検討ください!
日時:2024年12月17日(火), 18日(水), 19日(木)
場所:東京八重洲(対面形式)
今回のニュースレターは以上となります。
それでは、素晴らしい残りの週末をお送りください!
西田, Exploratory/CEO
KanAugust