こんにちは!
Exploratoryの西田です。
先週は一週間日本でしたが、あまりの暑さにやられました。(笑)普段住んでいるフロリダの夏も暑いですが、それ以上に暑かったです。
ただ、琥珀流しのようなデザートであったり、京都の川床であったり、暑いときにこそ楽しめるものがあるのは日本の素敵なところで、そういう意味では日本の夏を少しでも楽しめたのは幸せでした。
ところで先週は水曜日にデータリテラシー・セミナーを東京で開催しました。データを使ってビジネスを改善するためには欠かせない、アウトプット指標とインプット指標をモニタリングしていく仕組み。これをアマゾンの例を参考に具体的にどう行っていけばいいかという話をしました。こちらに録画がありますので、ぜひご参照下さい。
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AI、そしてNvidiaに群がるテック企業
先週ロサンゼルスで、シリコンバレーで最も人気のあるポッドキャスト「All-In」によるイベントがありました。その1つのセッションでPaypal創業者、ベンチャーキャピタリストのピーター・ティール氏によるAIビジネスの本質に関するコメントが面白かったです。
「NvidiaがAIビジネスの利益の100%を取っている。それ以外の企業はみんなお金を失っている。」(リンク)
現在OpenAI、Google、X、Tesla、Metaなどを含め、どのAI企業もAIモデルをトレーニングするために大量のGPUを備えた施設の構築、または確保に追われています。ところがそのGPUを作れるのは現在のところNvidiaしかなく、そのGPUの供給は需要に追いついていません。
データの量は増える一方ですし、AIモデルの方も進化し続けているため、しばらくこの傾向は続くでしょう。どのテック企業またはAI企業もこの競争に負けるわけにはいかないため、採算度外視でこの供給の足りないGPUの奪い合いが起きています。
ここで不思議なのは、AIにおける競争優位はChatGPTのモデルであるLLMのようなソフトウェアではなく、NvidiaのGPUというハードウェアだということです。これが長年シリコンバレーのソフトウェア企業に対して投資をしてきた人たちにとっては違和感のある現実だということです。
たしかにシリコンバレーには例えばAppleのようにPCやiPhoneなどのようにハードウェアを作っている企業もありますが、それでもやはり彼らの競争優位はMacOS、iOS、App Store、iTunesなど、ソフトウェア・レイヤーにあります。そして、Google、Meta(Facebook、Instagram)、Airbnb、Uberなどはどれもソフトウェアに強みを持つソフトウェア企業です。これがとくにここ30年ほどのシリコンバレーのトレンドからすると違和感があるということなのでしょう。
ピーター・ティール氏のトークの全編は以下となります。
ところで、このNvidiaのGPU獲得競争については、オラクル創業者、現在CTOのラリー・エリソン氏も先週の記者会見で同じようなコメントをしていました。
「私 (Oracle) とイーロン (SpaceX/Tesla/X) とジェンセン (Nvidia) の3人で日本食レストランのノブで夕食したんだが、俺達の金を持ってってくれ、もっと持ってってくれ、とジェンセンを拝み倒したよ。」(リンク)
フルビデオ:リンク
オラクルは今となってはクラウドインフラを提供する企業ですから、そうしたクラウド環境でAIモデルをトレーニングしたい顧客は山のようにいるはずです。そこでオラクルとしても大量のGPUを用意する必要があるのです。
イーロン・マスク氏もTeslaの自動運転、XのGrokなど自分の抱えるどの企業もAIが中核ですので、大量のGPUを必要とします。
テック企業はどこもNvidiaのGPUが喉から手が出るほどに欲しいわけですが、シリコンバレーではトップレベルの人間関係がフルに作動しているようです。
カメラとドローンによって市民が四六時中監視されるようになる
さきほど出てきたオラクルのラリー・エリソン氏ですが、彼によると近い将来すべての市民がカメラとドローンで四六時中監視される世の中になるとのことです。(リンク)
これによって市民は犯罪を犯さなくなり、いつも正しい行動をとるようになるから、それはいいことだという文脈です。
このニュースレターをこれまで読んできた人たちはご存知だと思いますが、現在世の中は確実に監視社会に向かって進んでいます。それはジョージ・オーウェル氏の「1984」という小説あるような世界です。それは共産主義のような専制政府によって何が真実かが管理され、市民は絶えず監視され、個人が自由に考えることさえ禁止され、絶えずプロパガンダと恐怖によって支配される世界です。
車、スマホ、PC、玄関、エレベーター、ドローン、信号機、電車、改札、などすでにカメラは私達の身の回りに絶えずあります。こうした画像はシリコンバレーにある数少ないクラウドテック企業に送られ、AIを使って自動的に処理されます。
そしてこの数少ないテック企業をコントロールする、または影響力を持っている人たち(それはアメリカの場合は民主党であったりします)にとって都合の悪い情報や考えは「誤情報」というラベルが貼られ、それに触れる人達は自分の使うサービスのアカウントが停止されたり、警察に捕まったりするような世界はすぐそこまで来ています。
実際、現在イギリスではソーシャルメディアへの投稿や流れてきたツイートをリツイートすると逮捕される人が出始めています。(リンク、リンク)
中国ではすでに起きていたことで、そのさい中国は共産主義政権の国だから、独裁主義だから、といった感じである意味他人事でした。ところが現在、私達が民主主義、自由主義だと思っていた「西側」諸国でも同じようなことが起き始めているということです。この危険なトレンドには注意を払うべきだと思います。
今週のチャート
最近PEWリサーチによって、アメリカ人がどのソーシャルメディア系のサイトを使ってニュース情報を得ているのかについての調査結果が発表されました。(リンク)
それによると多いのはFacebookとYoutube、それぞれ30%を超えるレベルです。3人に1人はFacebookやYoutubeからニュースを得ているとのこと。
ここで1つ注目したいのは、TikTokが急速に伸びているということです。数年前ま数%だったのが最新では17%、5人に1人近くがTikTokからニュースを得ているということです。
ところでこの中でTikTokだけがアメリカの企業でありません。現在アメリカの民主党政権と対立しているXも政府にとっては目の上のたんこぶですが、それ以上に中国政府との関係の強いTikTokから多くのアメリカ人がニュースなどの情報を手に入れているという事実はアメリカ政府にとっては不都合なはずです。
こうした背景もあって、今年4月にTikTok禁止法案が可決されました。これにより親会社のBytedanceはTikTokを非中国人の人たちに売り渡すか、さもなければ禁止というものです。ただ猶予期間があり今年の終わりまでは執行されず、今現在TikTokはUS政府を相手に法廷闘争中です。
アメリカは誰がニュースを含め情報を管理しているかに敏感です。ニュースが世論を形成し、世論が選挙を動かすわけですから、民主主義を謳う国であれば当然と言えば当然です。その点で、日本も外国政府からの影響に対してもう少し敏感になってもいいのではと思います。
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日時:2024年12月17日(火), 18日(水), 19日(木)
場所:東京八重洲(対面形式)
今回のニュースレターは以上となります。
それでは、素晴らしい残りの週末をお送りください!
西田, Exploratory/CEO
KanAugust