われわれは、分析においては革新的、理念においては理想的、方法においては保守的、行動においては現実的でなければならない
ピーター・ドラッカー
こんにちは、Exploratoryの西田です!
早いもので今年もすでに2月となってしまいましたが、皆さんお元気にお過ごしでしょうか?
私の住んでいるフロリダはこの一ヶ月ほど冷え込んでいたせいか、家族の誰かが絶えず風邪にやられている状態が続いていましたが、ようやくみんな元気になってきました。
ただ、日本に目を向けると現在も北陸地方では復興が遅れているという話を伝え聞き、心配するとともに一刻も早い正常化を祈るばかりです。
さらに中東の方も、イスラエル・パレスチナで始まった戦火は収まるどころか、徐々に他の地域に拡大しつつあり、今後どうなるのか不安でもあります。
ところで、私の住むアメリカでは現在国境を侵入してくる不法移民の数がとんでもないことになっていて、自国の国境を守れない政府に対する不満が全国的に広がっています。
中東の問題にしても、不法移民の問題にしても、アメリカのメディアは政府公認の見解を伝えるばかりで真実を伝えようとしません。さらにコロナ時の検閲がX(Twitter)などを通して次々と明らかになってくるにつれ、現在アメリカではメディアを信用できないという人たちが増加中です。
そこでより多くの人達は、伝統的なメディアではなく、ポッドキャストやソーシャルメディア、オルタナティブ・メディアなどから情報を得る傾向が増えています。
しかし情報源が増えたところで、「何が正しいのか」という問題は残ります。
そこで科学的思考、つまり仮説を立て、データを使って間違いがないか検証していくことを、より多くの市民が自分の手で行っていくことが求められるのではないかと思います。
それだけに、これからもより「データが民主化」されるよう、活動の質とスピードを上げていきたいと思っております。
引き続きよろしくお願いいたします。
西田
最近の興味深いデータ関連記事
人間をAIで置き換えるのはコストがかかり過ぎる
It's expensive to replace humans with AI, MIT says - Link
人間の仕事の多くはAIで置き換えるにはコストがかかり過ぎるという研究レポートが最近MITから発表されました。(リンク)
今回の調査はコンピューター・ビジョンにフォーカスしたものですが、現在は3%ほどの仕事のみが経済的な観点から自動化するに値するとのことです。
大きな理由は、人間は仕事を行う上で、これまでの経験から得られた直感や暗黙の知識などを元に、クリティカルシンキング、エモーショナルインテリジェンスを用い、意識的または無意識的な思考プロセスの元、様々な意思決定を行います。
そして、人間はこうして得られた知識やスキルを絶えず更新し続けていくものです。
こうしたことをコンピューターやAIで置き換え、さらにそのメンテナンスを続けるのは、できるかできないかよりも、単純にコストが掛かりすぎるので、逆に人間がやったほうが安いし効率的だということですが、もっともだと思います。
技術的に「置き換えれる」と経済的に「置き換えたい」というのは違います。この視点がよくある「多くの仕事がAIに置き換わると」いうニュースに欠けていると思います。
生成AI時代の著作権 - ニューヨーク・タイムズ vs. OpenAI
去年の年末、ニューヨーク・タイムズがChatGPTの開発元であるOpenAIとそのパートナーであるMicrosoftに対する訴訟を起こしました。(リンク)
OpenAIがChatGPTのAIモデルをトレーニングするために、ニューヨーク・タイムズの記事を勝手に使ってサービスを提供しているというのがこの訴訟のポイントです。
ただ、これは難しい訴訟になるかもしれません。というのも、アメリカのコピーライト(著作権)に関する法律は私達一般人が思っているほど単純ではないからです。
現在のような生成AIブームの中では、そうしたテクノロジーを使って新しいサービスを提供するチャンスがたくさんあります。ただ気をつけなくてはいけないこともあるので、アメリカの最新動向を皆さんと共有できればと思い、記事としてまとめました。
新しいAIモデルはアメリカ政府の許可が必要となる
OpenAI and Google will be required to notify the government about AI models - Link
AI企業はまもなく新しいAIモデルを開発するさいにアメリカ政府に報告しなければいけなくなるとのことです。最近制定された「ディフェンス・プロダクション法」が根拠となっているとのこと。ジーナ・レイモンド、アメリカ商務長官によると、
「私達はディフェンス・プロダクション法を使って、企業が新しいLLM(大規模言語モデル)をトレーニングするさいは毎回その安全性に関するデータを含め結果を政府に報告させます。そしてそれを私達がレビューします。」
とのことです。
安全性のためというのが表向きの理由ですが、これはおそらく既存のアメリカの大企業の利益を守るために使われるでしょう。
銀行業界でもよくある話ですが、政府によるこういった規制は当初一般の国民のためという触れ込みなのですが、そもそも政府には企業の活動業務やサービスをレビューするために必要な知識も人材もないため、結局は既存大企業の言いなりになってしまいます。
今回も、AIモデルのレビューには既存のGoogle、Microsoft、OpenAIなどからの人材に頼らざるを得なくなり、彼らが審査のチェックリストやガイドラインを作ることになります。もちろん自分たちに都合の良いようにです。
私は以前からこの点を問題にしていますが、より多くの日本企業にもこの問題について知っておいてもらいたいと思います。
前述の商務長官はさらに、アメリカのクラウド企業、つまりAmazon、Google、Microsoftなどが自分たちのサービスを利用する外国企業やユーザーに関する情報を報告させるための大統領令を出すという話もしています。(リンク)
日本企業がアメリカのクラウド環境を使ってAIモデルを作るとき、それはアメリカ政府、さらにはアメリカのAI企業には筒抜けになるということです。
X(Twitter)、アトランタに新しいAIデータセンターを建設開始
Elon Musk’s Twitter/X granted $10 million tax break for AI hardware in Georgia - Link
イーロン・マスクのX(Twitter)はジョージア州のアトランタに約1000億円($700M)をかけて新しくAIデータセンターを建設するとのことです。
X(Twitter)は去年1万個ほどのGPUをAIのトレーニングのために購買したというニュースもありましたが(リンク)、彼らは自分たちのGrokというChatGPTに対抗するAIの開発に本気です。つまり、AIの開発に本気であれば、自前でデータセンターを作り、大量のGPUを用意しなければいけないということですね。
先週のセミナー
オープンデータを使って気候変動問題の裏側に迫る
日本に帰る度に、日本で当たり前となっている世界とアメリカで当たり前となっている世界の乖離に驚きます。おそらく、日本のメディアはアメリカの一部のメディアからの情報しか流さないからなのではないかと思います。しかし、そうした情報は必ずしも「欧米の常識」というわけではなく、さらに真実というわけでもありません。
先日開催したデータリテラシー・セミナーでは、オープンデータを使って、地球温暖化の真相に迫ってみました。
今週のチャート
TWD #10 - 大量の違法移民が押し寄せるアメリカの国境
冒頭でも触れましたが、現在アメリカでは国境を違法に侵入してくる移民の数がとんでもないことになっています。そこで、今回は違法移民の逮捕数のデータを元にそのトレンドを可視化してみました。
さらにちょっと調べてみたところ、そうした移民は自発的というよりも、特定の団体などによって組織化されているものということもわかりました。このあたりの解説もしていますので、ぜひ御覧ください!
データサイエンス・ブートキャンプ・トレーニング #34
毎回人気のデータサイエンス・ブートキャンプですが、次回開催はこの3月となっております。
今回も東京でのクラスルームでの対面授業形式での開催となります。授業内容を振り返るためにトレーニング中6回ほど、参加者どうしでグループを作っていただくエキササイズの方も用意しております。
ビジネスのデータ分析だけでなく、日常生活やキャリア構築にも役立つデータリテラシー、そして「よりよい意思決定」をしていくために必要になるデータをもとにした科学的思考もいっしょに身につけていただけるトレーニングとなっています。
データサイエンス、統計の手法、データ分析を1から体系的に学ぶことで、ビジネスの現場で使える実践的なスキルを身につけたいという方は、ぜひこの機会に参加をご検討ください!
日時: 2024年3月26日(火), 27日(水), 28日(木)
場所:東京八重洲(対面形式)
以上となります。
それでは、素晴らしい週末をお送りください!
西田, Exploratory/CEO
KanAugust